杉坂建築事務所の家は、一棟一棟日本の住まいを知り、新たな居住性に目を向ける経験豊かな建築家が設計します。これは、「家は住む家族の生活や建てる土地、環境に合わせて一棟ずつ慎重に設計すべきである」という創業以来の基本方針に基づくものです。
家に対するニーズは時代と共に変化し、価値観や必用とされる機能も大きく変わりました。技術革新には目を見張るものがあり、次世代に向け重要な技術も確立しています。
ですが一方、多種多様なデザインスタイル、合理化された素材・工法が乱立する様にもなりました。安易な選択は無秩序な街並みをつくり、長期的な資産となる住まいの価値を落とすことにもなります。
その様な現代だからこそ住まいの本質を求める姿勢が非常に重要といえます。そしてこの国の伝統に培った住まいのかたち=和を根底に持つことこそが、真の安心と快適をもたらすと私たちは考えています。
杉坂建築事務所が創る和モダンの住宅デザイン
私たちは、生活がどんなに進化してもどこか日本的なエッセンスを愛でる感覚を持っています。遺伝子に刻まれたものがあるのかもしれません。
杉坂建築事務所の基本理念について『大切なこだわり』の稿でお伝えしました。そして前段でお伝えした“和”を底流に持ちながら、杉坂建築事務所では独自のモダンデザインに昇華し、提案しています。
佇まいのある家
住まいには彫りの深い品格を持たせたい。
深い軒や庇は建物の表情をつくり出し、強調された水平のラインがつくり出す安定感が落ち着きのある風格を与えてくれます。
これは和風建築の機能美にも通じます。湿潤で雨が多いこの国において、住まいを衛り陽射しを上手に制御する軒/庇の役割は古くから重要な要素でした。
また生活の西欧化とともに機能・性能が進化した現代に於いて、住まいは既にモダンであると言えます。だからこそ、外の庭や風景と繋がるという日本ならではのつくり様にも目を向けていただきたいと考えています。これによって暮らしに潤いと広がりがもたらされるとともに、住まいはより印象的な佇まいを手に入れる事ができる様になります。
オーナーとして末永い満足感を掴んでいただける様な、すっきりとした現代性と和の様式美を併せ持つ住まいであってほしいと願っています。
住み手と共に時を重ねて行く素材
昔の住まいは地域にある本物の素材を上手に活用し、熟練の手仕事により形づくられていました。それらは時を経ることで深みと趣を刻み、独特の味わいを湛える様になります。
近年、技術の進歩とともに非常に合理化された素材が多用される様になりました。もちろんそれらにも良い点が沢山あります。ですが職人の熟練を要さず、時の経過により魅力を積み重ねることもありません。
現代の生活空間にも、本物が時間を掛けてつくり出す醍醐味を採り入れていただきたい。
私たちは時がつくり出す住空間、住み永らえて得られる価値を創造します。
日本的情緒と西欧モダンの融合
日本人には曖昧さを良しとする感性があり、それは日本の住まいにも表れています。この国の美しく変化に富んだ四季に馴染もうとするかたちが、家の内外を緩やかに仕切りつなぐ設えをつくり出しました。それが自然と共存し光と影の移ろいを生み出す「和」の醍醐味となっています。
私たちは陰影がつくり出す豊かさに着目します。最近はパッと明るい、白とガラスで構成された様な空間がもてはやされます。それはそれで良いのですが、季節や気象に寄り添いゆったりと時間を楽しむ様な生活空間を採り入れていただけたらと考えています。
また、現代的でありながらどこか懐かしさを持ち、クラシカルな艶感を持つ空間デザインも杉坂建築事務所がつくり出すスタイルと言えます。これは現代的過ぎず古風な和でも無い、独特の過渡期的な和洋折衷が現代日本人の心に馴染むと考えるからです。
移ろいを感じる素材とそれを華美に仕立て過ぎないデザイン。それが懐かしみにも似た印象をもたらし、住むほどに愛着と満足を与えてくれるはずです。