狭小住宅とはその名の通り狭小な土地に建てる住宅を指します。明確な定義はありませんが約20坪以下の土地を狭小地と呼ぶことが多いようです。
単に面積(だけ)が狭いだけでなく、旗竿形状や三角形状のような変形地も多く見受けられます。
その様な場合、建物が建てやすい整形敷地よりも低い価格で売買されることが多いです。
都市部で土地から購入し住宅を建てることは金銭的なハードルが高くなります。
ですが小規模な分土地の値段を抑えることができる狭小地。土地の選び方や計画方法によっては都市に良い住まいを持つ願いが叶えられるかもしれません。
狭小住宅を建てるにはいくつかのポイントがあります。
ここでは狭小住宅を建てるにあたって間取り、敷地の選び方、注意点などをご紹介いたします。
狭小住宅を設計する上でのポイント
狭小住宅を設計するのは簡単ではありません。なぜならば限りある土地を活用しきるプラン力、厳しい法規制や条例を満たす柔軟性などを必要とするからです。
初めて狭小住宅を計画する業者と何棟も経験のある業者とでは実際の計画は大きく異なるでしょう。
以下では狭小住宅を設計するポイントについてお伝えします。業者選びの参考だけでなく、自身のプランの参考にもしてみてください。
垂直方向に展開する
通常間取りは平面的に考えますが、狭小住宅では平面が限られます。
しかし空間をより広く見せるため、実は垂直方向に展開する間取りが有効だったりするのです。
具体的にはちょっとした吹き抜けやスキップフロア、小屋裏空間など。
これは空間を有効活用する効果的なプランの手法ですが、それ相応の設計力や経験が必要になります。
吹き抜けを取り入れる
狭小地は比較的住宅密集地にあることが多いです。そのため隣棟間隔が狭く、日射しの採り入れに苦慮する事もあります。
そんなとき「吹き抜け」という考え方はある意味有効な手段となります。
“ある意味”というのは、狭小地において床面積は非常に重要な要素なので、慎重な判断を要するからです。容積率算定に含まれない吹き抜けではありますが、高さ(斜線)制限など制約のかかることが多い集密市街地では、確保可能な総床面積のなかで吹き抜けに取られるボリュームは大変貴重な存在。
ですが適度に、そして上手に採り入れてあげると、住まいの快適性向上に役立つ要素になり得ます。
“吹き抜け=寒い”というイメージを持たれている方は多いのではないでしょうか。
ですが現在、住まい造りにおいてその考え方は古いものとなっています。
高断熱であることが当たり前になると、実は吹き抜けが怖くなくなります。そして住まいの利点に活かす事が出来る様になるのです。
例えば階段室。これも立派な吹き抜けです。従来の住まいにおいて、階段質は廊下の一角に存在していました。単なる通過導線の場所としてしか機能していませんので、限られた狭小住宅の中ではちょっともったいない空間です。それをリビングや共用スペースの一角に取り込むことで、空間の採光や通風を補ったり、上下階の温度差を解消できるようにもなります。詳細をここでは述べませんが、階段が通過のためだけでない、機能性を持った存在に変わります。
普通の吹き抜けであっても、大きさのバランスや位置関係を考えてあげれば採光・通風・熱制御に大いに役立ちます。
当然空間に変化をもたらしてくれますので、居住性や広がりも高まりますし、住まいに個性が出ますので愛着もわきます。
スキップフロアにする
先にも述べましたが、住宅において意外と面積を取る階段。階段の寸法は法律で一段の高さ(蹴上げ)が最大でも 23cm、奥行き(踏面)が最低でも15cmと決まっているため、どんなに切り詰めようとしても階段室の面積は2畳程度必要になります。
狭小であればあるほど延べ面積に対する階段室の割合は大きくなります。そんな階段室を上手に利用してしまおうというのがスキップフロアです。
プランニング次第で階段を分散させ楽しげな空間にすることが可能です。
スキップフロアにすることは、1階、2階と完全に上下分離させたプランニングよりも空間全体が広く感じられる事が多いです。これは階段を2~3段上がるだけで上階の視界が広がることや、上下階移動が少なく感じる楽さなどから得られるものかもしれません。
但し建物の構造が少し複雑になり、半地下にしないと空間利用上の無駄が出てしまう事もあるため、建築コストが割高になりがちな点に注意しましょう。
視界の先に開口部を設ける
人間の広さの感じ方は実際の広さとは異なることがあります。視界が開けていたり、空間が明るいと圧迫感がなく広く感じるものです。
そのため、廊下や階段など行き止まりの先に窓を設けたり、視線が空に抜けるトップライトやハイサイドライトをリビングに設けることは、狭小ながら豊かな空間を作る上では効果的です。
また隣家の影響も受けにくく、高い位置にあることにで長時間の採光を可能にするなど、狭小住宅には向いているといえます。
これらの手法を上手く取り入れることで実際の面積以上に広がりを感じる空間になります。
ビルトインガレージを検討する
意外と大きな面積を要するのが駐車場。乗用車であれば3m×6m程度のスペースは欲しいところです。
狭小地の場合、このスペースを捻出するのに一苦労します。そんな時はビルトインガレージをプランの候補に入れてみてはいかがでしょうか。
建物の一部を駐車場にすることで駐車場を設けながらも、建ぺい率を有効に活用した建物を計画することが可能です。
但しこれも高さ(斜線)制限などとのバランスで必ずしも有効とはならない事もありますので、あくまでも有効性を検討してみることと捉えて下さい。
狭小住宅を建てる際の敷地選びで確認すべきこと
ひとくちに狭小敷地と言ってもそのバリエーションは様々です。
面積は同じでも場所によって法規制が異なりますし、敷地そのものの形状はもとより道路付けも異なります。家を建てる判断は敷地面積だけでなく、そこにどのような立体が、そして間取りが実現可能なのかという点に注意を向けるようにしましょう。
法規制
狭小敷地が多い都市部ほど法規制は厳しくなりがちです。
使えるスペースがそもそも限られている狭小敷地において建ぺい率が10%異なるだけで大きいものです。
敷地面積が狭く、さらに建ぺい率50%などでは可能な間取りも限られてしまいます。
このような規制は世田谷区役所で誰でも調べられます。区役所のウェブサイトでも確認出来ますので、検討している敷地について可能な限り確認するようにしましょう。
更に都内では「東京都安全条例」という規則も存在し、こちらも非常に重要な規制となります。これを把握するのは難しいですので、不動産業者やご依頼の建築業者に確認される事をお勧めします。
変形敷地
世田谷区であっても敷地の価格が安いことがあります。これは単に面積が狭いからというよりも、整形でない変形した敷地であったり道路付けの条件に難があるからということがあります。
もともと大きかった敷地を切り売りした結果、旗竿敷地や変形敷地などが出来上がった経緯などもあります。
旗竿敷地は見かけの敷地面積は広くても、通路部分の面積を除くと思いのほか使える面積は小さいことがあります。また通路部分が規定の副因に達していない場合、そもそも建築が困難になってしまう事もありますので注意です。
陽当たりや風通しは良好か
毎日の暮らしに大きく影響するものと言えば陽当たりと風通しではないでしょうか。暮らしの快適さはもちろんですが、健康にも影響するので大切です。
狭小地の場合、隣の家との間隔が狭くなることが多いので陽当たり、風通しを効果的に確保するのが困難なケースも多いです。
そのため、周囲の建物と建物の隙間を有効に活用したり、西や北の方角でも何かしらメリットがあれば活用するなど、通常の敷地より繊細に見極めることが必要です。狭小地だからこそ検討している敷地に足を運んで体感してみることをおすすめします。
工事費が割高になるケース
狭小住宅は場合によっては工事費が割高になる可能性があります。
クレーン車が敷地前まで入れない場合
基礎工事におけるコンクリート打ちや構造体の建て方作業の際など、序盤の工事においては大きな車両が入ることが多いです。
広い前面道路に面している整形な敷地であれば良いですが、細街路の奥まった狭小地で通路幅の2mの旗竿敷地などですと、ミキサー車やポンプ車、クレーン車や資材運搬車が入り込めないこともあります。
そうした場合、小型車で台数を増やして小運搬したり離れたところに車を停めて人海戦術で建て込むなど、大変手間を要するため別途料金がかかります。
地盤改良が必要な場合
狭小地では限られた敷地を活かすため3階建てになることも良くあります。
3階建てになるということは2階建てよりも建物の重量が大きくなります。
そのため、そのままの地盤では建物を支えるには不十分で杭による地盤改良が必要となり地盤改良費が発生する可能性が高まります。
まとめ
世田谷区だけではありませんが、細分化された土地、細街路に接した土地はまだまだ多く、防災上の観点などから建築に当たっては制約が厳しくなるケースが多く存在します。
狭小住宅は、地価が高い都市部においては選択肢の一つとして考えられる方も多いでしょう。
大切なことは狭小地の特徴を知り、狭小地の間取りのポイントを知ることです。
敷地の条件や依頼する業者、そして施主の要望が上手くマッチすれば、満足のいく住まいを手に入れることができます。