柿の木坂の家

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柿の木坂の築89年の改修工事が終わりました。
今年も厳しい酷暑の夏でしたが、その中で作業して下さった職人さん達に感謝です。

このお宅には2階の屋根よりも高いハナミズキが2本あります。
都内の個人宅でこの高さの樹があるのは珍しいと造園屋さんが云っておりました。
道路沿いにはツツジ.サツキ.カリン.サルスベリ等が咲き、晩秋には門周りが紅葉で染まります。
「綺麗ですね!」とよく言われるそうですが「毎朝掃除が大変!」と仰っていました。
工事期間中、道路を掃除していた現場監督に、近隣の方からお褒めのお言葉を頂戴したそうです。
 

さて計画では柱や梁をなるべく残しながら進めていく予定でしたが、解体していくにつれ、雨水の処理が上手くなされてなくて地盤が沈みそれが原因で基礎が折れていたり亀裂が入っていたり、当然部屋は傾きます。
事前調査ではシロアリの被害を受けている箇所も特定していたのですが、開けてみるとそれ以上の広範囲に及んでいました。
「シロアリ恐るべし!」
お施主様に現状を見て頂き、基礎の一部新設や補強、柱や土台の入れ替え、耐力壁の追加等々の変更、それに伴う工期の延長を承諾して頂きました。
 

工事場所はラフタークレーンが使えない建物の奥。
資材は玄関から廊下を突っ切って搬入。
210角(7寸)x3600の大黒柱は吉野杉。
120x300x6000の長物の梁は4人掛かりでした。
新たに構造体を組む前に腐食した柱や小屋梁などを撤去しなければなりません。
大工さんは、どのような手順でやればバランス良く安全に解体し組み上げていけるか、まるでパズルを解いていくようで面白いと言っておりました。
 

このような改修工事には大工さんの経験と技術が必要です。
今回は手刻みでやって頂きました。
日本古来の技法である「金輪継ぎ」という最強の継手を2本の梁に施し「込み栓」で固め1本にします。
大黒柱と重さ約100kgの無垢材の梁を組み上げるには、ラフターが使えないのでこれも4人掛かりでした。

あれから3ヶ月!
リビングは漆喰壁で勾配天井。
ご主人が趣味のチェロを弾いたら響きが心地よかったと嬉しいお言葉を頂きました。
奥様は紅く塗った硝子ドアが皆さんにも好評だと!
89歳の母上様の和室の続き間は、補強の壁を設け天井は弄らず、壁は落ち着いた色の聚楽壁にしました。
畳は表替え、建具は変えず障子と襖は張り替えただけ。
部屋の雰囲気は敢えて変えませんでした。
 

 

それから各部屋と廊下の土壁や布クロスは、除去して左官屋さんにしっくいで仕上げてもらいましたら染み付いていたカビ等の嫌な匂いが全くしなくなり家中の空気が変わりました。

それと応接間の昔の窓硝子を何処かに使って欲しいとのご要望には、応接間の雰囲気が醸し出せるように、新規の建具と欄間に使用しました。
硝子の寸法と桟の比率が難しかったと建具屋さんは言ってましたが、でも嬉しそうでした!

 

このお宅は以前から家族は勿論、ご親戚ご友人の方々が遠慮せずに集って来る家だったそうです。
既に行きたいという人達が沢山いらっしゃると聞きました。
その人達の感想を聞くのが楽しみです。

 

職人さん達のカッコいい姿がこの現場でも沢山撮れました。

 

三枝

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