9年振りの改修工事でした。
初回は平成22年1月。玄関前の部屋をお茶室に改修。
2回目は英国の田舎から帰国された後!
古民家を改修した友人宅では、古材が醸し出す温もりがとても心地良く、
暫く滞在させてもらったと仰ってました。
そして帰国。マンションのドアを開けた瞬間、
来てくれた人達は部屋は広いし眺めも良い!羨ましいと言ってくれるが、
この無機質な部屋に俺はずっと住み続けるのか・・・!
瞬間的にそう思ったのだそうです。
お茶室に改修してくれた杉坂建築事務所ならば、此処を何とかしてくれるのではないかと思い、
帰国早々お電話を頂戴いたしました。
二期工事は同年8月から!
エレベーターに入りきれない長物の丸太梁や大黒柱は全て半分のサイズに切って搬入。
リビングは継ぎ合わせて一本にする加工場と化し、13階とは思えない大掛かりな改修工事となりました。
お施主様は伝統的な木組みの技を直に見ながら、
大工さんが太くて重い松梁をヒョイと担ぎ上げて
組んでいくのを目を細めて見ていらっしゃいました。
マンション購入時、施工出来ないと言われた念願の障子も入れました。
あれから9年、懐かしいお声の電話を頂戴しました。
伺ってお話をお聞きすると、この地域でこのような造りのマンションは
一軒も無いと銀行の人や保険屋さんが感心してたとか、
リフォーム会社の社長は下のガソリンスタンドで給油中、職業柄障子が入ってる13階の窓が気になり、
見上げる度にどんな部屋なのか一度見てみたいものだと常々思っていたそうです。
奇しくも奥様同士がお茶のお稽古で知り合いだった縁で念願が叶ったのですが、
部屋に入るなり「此れはうちでは無理だ!」
お施主様 “我が意を得たり”
改修して本当に良かったと思いながら現在80+α歳!
「情熱は歳をとっても減らない」と言いますが、
今度はお茶室の壁を取り払い、洋間を和室に改修して一つの部屋にしたいとのご相談でした。
壁を取り払うと炉を切ってあるので段差が生じます。
和室に小上がりの茶室があるという感じです。
リビングの雰囲気も取り入れて欲しい!
8.8畳の部屋に丸太梁は重厚過ぎますから、
角梁を二本東西方向に架け、その間に照明器具を兼ねた障子を取り付けました。
開き戸もお茶室に合わせて三本引きの襖に作り変え、
障子も梁と同じ色に塗装しましたので、陽の光がより柔らかく感じます。
8畳でするお茶のお稽古もあるとのことで、
今度は置き炉ですが奥様も楽しみにしていらっしゃいます。
これまで一期.二期.三期工事と、お声をかけ続けて下さいましたご厚意に感謝申し上げます。
三枝