この家を引き継ぐ

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今年も悲喜こもごもの内に間もなく終わろうとしています。

先般、お嬢さん主催の両親を偲ぶ会に出席させていただきました。
5月にお父上! それを追うかのように10月に母上様がご逝去されました。
古代文字をモチーフにした書家であり、句集も出されていた奥様。
80歳と77歳のとても仲の良いご夫婦でした。

偲ぶ会を親しかった極少人数で行いたい!
お声をかけてくださり、工事監督と私とで出席しました。
インドが大好きなご両親で、以前なんとマハラジャにお会いして来たと伺った事がありました。
凄いですよね! マハラジャに会えるなんて⁉️
テーブルには故人が好きだったインド料理が用意されてました。
各々自己紹介を兼ねながら、お二人とのお付き合いの中での思い出を、持参の写真なども交えながら少しずつお話しが続きました。

私は20年前、横浜山手のモデルハウスにお見えになった時から竣工までのエピソードをお話しさせて頂きました。
モデルハウスにお見えになった日に、元町のアンティーク店でインドの民俗工芸品(今もお住まいに飾られています)を衝動買いなさってしまったエピソードをはじめ、終始和かに雑談をお聞きいただきました。
ほかにも、
ご自宅に呼んで頂いた時に初めてお話し下さったご要望のこと。
間取りは当然のこと、お二人のアイデアなどが住まい各所にあること。
玄関ポーチから続く、今私たちがいるこの事務所兼書斎の床に張ったテラコッタ、このサイズと色合いはご主人のご要望で..などなど!
当時、沢山のお話しを重ねましたが、決して無理なご要望はありませんでした。
職人さん達もそんなお二人のあたたかなお人柄にふれられ、楽しい現場だったと言ってくれたことなどをお話しさせて頂きました。
お嬢さんは初めて知ったことが多かったと仰っていました。
出席された方々も頷いていらっしゃいました。

家を引き継ぐにしても、これらのストーリーを知っているのと知らないのとでは、家への愛着が全然違ってくると思うのです。

それから前回のブログ「ランドマーク」のお施主様。
実はこの方は、12年前に弊社で建てた家をご購入されました。
当時、お施主様は10年経ったら売却すると仰っていた方でした。
購入後は別会社でキッチンを替えたりサンルームを付け足すなどのいくらかの改修をなさったそうです。
その中で「どうしてこの見晴らしを望む場所が、大きくて普通よりも厚い壁になっているのか?」という疑問が生じたそうです。

そこに大きな窓を開けたい、と依頼した大工さんに相談したら、このままいじらない方が良いと反対されたのだとか。
そしてある日、ご夫婦で弊社のモデルハウスにお見えになりました。
あの家のことを知っている方はいますか・・・と。
担当は私です。
土地購入の話から床下には宮崎県から運んだカーボンが敷き詰めてあること、間取りには風水を取り入れていること、各種ドアを風水用のスケールで造ったので高さが微妙に違うこと。
そして一番景色の良いところをより厚い壁にした理由...これも実は風水によるものだったこと。
加えて玄関ドアは風当たりの強い位置に配置したのも然り。
本当はサンルームをその場所に造りたかったのですが、「張り出し」になるので駄目!
その他にも色々なことをお話ししました。
もともとの建て主様は新潟の十日町から出てこられ、若くして成功された方でした。
訳あって手放すことになってしまいましたが、此処までこだわった家造りは楽しかったですね!

私のiPadには棟上げの時の写真が保存してあります。
ご夫婦はそれをデジカメで撮って行かれました。
お二人が購入した家がどういう意図で作られたのか、どうして玄関があの位置になったのか、寝室の天井を勾配天井にする事も出来たのに何故平天井にしたのか...。
それからリビングの丸太の大黒柱2本の仕入れ先、木組みの話など、知っている限りのことをお話しいたしました。
納得されてお帰りになりましたが、それから長いお付き合いが始まりました。
住まい心地などのやりとりのなか、色々と工夫されて楽しんでいらっしゃるので嬉しい!とメールしましたら「元が良いからと感じています」とご返信いただきました。

メンテさえしていれば100年持つ家造りをしている弊社です。
こうしたストーリーを是非語り継いでいって欲しいと願っています。
今まで読んで頂き本当に有り難うございました。

それでは皆様良いお年をお迎えください。 三枝

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