伝統的な和の空間は人の持っているさまざまな感覚に対して相性がよい。そのことは視覚や味覚、触覚について考えてみれば明らかです。
ところが人の持つ基本5感覚の中で建築と案外大きな関係で結ばれているのが臭覚なのです。匂いをつかさどる感覚は人の持つもっとも高度な感覚だといわれます。人はどうしても視覚に大きく頼って生活しているから臭覚についてはあまりその重要性を認識していません。
建築の計画においても匂いが取り上げられることはほとんどありません。
せいぜい臭気を防ぐ換気の問題か、最近ではシックハウス症候群の原因と見られる建材からの揮発性有機化合物の刺激臭の除去といった程度。いずれにしても邪魔なものとして取り除くという視点から扱われています。
しかし考えようによっては、匂いは空っぽの空間を満たす実体そのものにみえなくもない。だからにおいも建築の一部に積極的に加えるべきだと思うのです。
木や若葉の香り、土の匂い、雨の日のにおい。何と言っても日本の四季の風情には「におい」がつきもの。だから「におい」を演出する和風住居の設計というのは面白いテーマだと思います。
(設計部 O)