未来和風の様式【01】

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『そろそろ日本の家』で、和風の持つ3つの幻想についてお話ししてきました。ここからはそんな幻想に縛られることなく、現代的でかつ本質的な日本の家を考えてみたいと思います。

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1:四季のリズムを反映する家

新しい和風の成立を際だたせるためには、我々日本人自身がまずその生活に日本的なる四季観を取り戻すことが必要です。それには、現代社会の消費構造と価値観そのものを変える必要があります。

しかし、この問題をクリアするには、まだまだ多くの時間を要します。現代の日本社会が抱える多くの問題を少し大げさに言ってしまうと、我々人間が自然の一部であることを忘れ、本来の人間性を喪失していることに根本的な原因があるように思います。『和風』が喪失されてしまうような社会基盤に、そもそも日本人らしさの復活はありえません。

このことに多くの人が気付く事によって、建築の側から支援できるような家づくりの方向性をこれからの和風建築に持たせる必要があると思います。いわば歪められた現代日本人の感性を取り戻す役割を担わせるのです。四季のリズムを住人の心に映し出す家は、必然的にその場所の環境と共生した存在です。

つまり新たな和風の様式とは、まさに日本型環境共生建築そのものの姿といい換えることができます。「環境共生」という21世紀の指針は、和風が過去の幻想から解放され大きく飛び立ち、生まれ変わるのに必要な力を与えてくれるに違いないのです。

2:日本型パッシブ設計

ところで、四季のリズムを反映する家とはいったいどんな家なのでしょう。

夏暑く冬寒い家? エアコンがなく我慢を強いられる家? いや、それでは単に気密性が悪くすき間風が吹くような昔の状態に戻しただけです。我々はすでに夏の暑さや冬の寒さを克服し、一年中一定な暑さ寒さに惑わされない家をつくることに成功しています。これを元に戻すだけでは誰も納得しないはずです。

そこでこの問題に明快な答えを出してくれるのがパッシブ設計という古くて新しい手法なのです。パッシブ設計とは太陽の熱や風の導入、空気の比重や温度差、圧力差を利用した換気効果、さらに地盤の熱容量といったものをうまく使い、建物の室内環境を自然の力で自立的に調整しようという計画です。

そのためには建物のある場所の詳しい気候や周辺の人工物、樹木などのつくりだす細かな気候をも分析し、それを積極的に利用していきます。そして自らが建物外部の敷地内にある余白部分に、新たな「微気候」をつくりだす工夫をすることも必要です。周辺環境を緑によって整えたり、遮熱してクーリングゾーンをつくりだしたり、風の道をデザインしたりしながら必要な外部環境を設計し、これを室内の環境と結びつけ効果を高めるという非常に高度かつ微妙な設計手法です。

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このような周辺環境と建物自体のパッシブ設計が上手に行われれば、夏冬の気候の厳しさは程良くカットされ、エアコンなしでも十分生活できる環境をつくりだすことができます。空調制御の家は、外部の環境状態とは無関係に大量のエネルギーを消費し室内を力で制御してしまうので、不自然に大きな温度差が生じ、人や建物の健康にも悪影響を与えます。

これからの時代は大きなエネルギーを使ってパワーで制御するのではなく、自然の力を利用して優しく柔らかくコントロールしてゆくような省エネ・ローインパクト技術の利用にその方向性を変えてゆくべきなのです。

(つづく)

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