月の石船
今年もまた桜の季節が巡ってまいりました。
21年経った今でもこの季節になると思い浮かぶ言葉が
「妖艶な桜に逢いたいものです・・・」
現在、ある華道の流派の幹部になられている方で、先日
私の言葉を覚えておられるのが嬉しいとメールを頂戴
しました。
老木の雅やかな妖艶な桜。願えば逢えるはず・・とも
書いてありました。
私の中では秩父市清雲寺の樹齢およそ600年の枝垂れ桜が、
その妖艶に値する桜だと思っています。
先週お伺いしたお施主様とは「根津美術館の敷石が素敵!
何の石かしら」 というような話になりました。
まだ入ったことがありません。興味があり検索してみると
根津美術館八景の一つに「月の石船」というものが在り、
その画像を見た途端見入ってしまいました!
何故かというと4年前に御前崎で建てさせて頂いた庭に
据えた、舟形の蹲(つくばい)とそっくりだったからです。
「月の石船」は「かつて根津家邸内の指標であった
舟形の蹲を朝鮮灯籠と組み合わせ、灯籠の光を月光に
石舟の形に三日月をなぞらえました」とありました。
「月の石船」現物を見てみたい・・・!
横断歩道を渡り本館に入った直ぐ左側にお目当の
「月の石船」が据えられていました。
細身のそれは御前崎のよりも30cmほど長いように
感じましたがそっくりです。三日月になぞらえたと
いうのもわかるような気がします。
御前崎の手水鉢も同じ御影石の塊を加工したもので
重さは1.5 t あります。お尻が張っていてるのに加え、
舳先がグッと突き出ていてどっしりとした魅力的な
形をしてます。
都内のお屋敷の庭に放置され窪みには雑木が植えられて
いたといいます。跡地にはマンションが建つのだとか。
丁度、井筒のような形で水を溜めたり流したりするものを
探していましたので即決し御前崎まで運んでもらいました。
造園屋さんは庭のシンボルとして手水鉢を中心に前石・
手燭石・湯桶石・水掛石などの役石や飛び石を配し又、
筧を作り、日本的な美の表現である「蹲」としての形に
造ってくれました。
蹲の周りに敷いてある小石を海というそうです。
根津美術館でも前石の両側に手燭石と湯桶石が据えられ
海は那智黒の小石でした。正に海に浮かぶ舟ですね!
2013年3月31日のブログ 「船形手水鉢」を見て下さい。
http://www.sugisaka.co.jp/?p=3212
御前崎のお宅の蹲には月が映るはず!
その月を愛でる為に月見台を造り、鋳物製の門扉には
月とウサギ(お施主様は卯年)をデザインしたものを製作、
矢羽ススキも植えてもらいました。
それは兎も角としてあの根津美術館に同じような蹲があった
ことと、それも月に因んでいたということを知り本当に
嬉しかった!
「月の石船」のことだけではなくフローリングのグレーの
石が何の石なのか聞くことも忘れてはいません。
展示物よりも主張しない石材として中国産の砂岩を使用。
茶色の点々は含まれている鉄分が錆びたものだと、
初老の案内係の方が教えてくれました。
新緑の頃や紅葉の季節にも訪れたいと思った美術館でした。
三枝