在来工法の耐震性は?
横浜山手を歩く絶好の季節となってきました。
ここ山手は、移築されたエリスマン邸を始め山手111番館、山手234番館、山手資料館、山手十番館、ベーリックホールなどの洋館が集中している地域です。ここにきて平日でもめいめい好きな洋館の前に座ってスケッチをしている人達が増えてきました。
その中に山手モデルは23年前に佐渡の大工によって建てられ、杉坂建築事務所が得意とする大黒柱と松梁を表した建物はここから始まりました。
構造は皆様ご存知のような伝統的な造り方で建ててあります。
屋根はというと天然スレート。日本では玄昌石といって宮城県の北上川河口に近い雄勝町と登米町でとれる硯と同じ粘板岩で葺いてあります。
多くの西洋館や教会の屋根に用いられ、現在の東京駅の屋根や横浜開港記念館のドーム、山手聖公会も同じ天然スレート葺きです。洋館では魚の鱗模様に葺いているものが多くみられますが、モデルハウスのそれは長方形の一文字葺きです。
2ヶ所に穴をあけ釘で留めながら重ねて葺いていく施工には熟練の技術を必要とします。モデルハウスからは日本瓦・カラーベスト(化粧スレート)・銅板・ガルバニウム・西洋瓦などで葺いた屋根が見えますが、天然スレートの屋根は23年経った今も葺いたときのまま色あせることなく、見る度に美しい!と思ってしまいます。
以前、銅版葺きが夢だったというお施主様がモデルハウスで打ち合わせを繰り返しているうちすっかりこの天然スレートが気に入ってしまわれ、大屋根の家をお建てになられたということがありました。
今でも小田原厚木道路を走る度、目がそちらに向いてしまいます。
地震に対して屋根材は軽い方がいい又、廉価であるという理由で化粧スレートが急激に全国に普及していきました。重ねて葺いていく天然スレート葺きの屋根は当然のことながら重くなります。それにも十二分に耐えられる造りをしています。モデルハウスだから特別という訳ではありません。在来工法は頑丈なのです。
お客様からよく聞かれることがあります。地震に対して在来工法はどうなのですか、と。良い設計者と工務店を知っていれば在来工法がいいでしょう。知らなければツーバイフォーが安心でしょう、とお答えしています。
余談ですが、横浜開港記念館ドームも天然スレート葺きだと書きましたが、今横浜では横浜三塔物語キング・クィーン・ジャックの都市伝説というのがささやかれているというのです。横浜港のシンボル、神奈川県庁(キングの塔)、横浜税関(クィーンの塔)、横浜開港記念館(ジャックの塔)という『横浜三塔』を同時に一望できるスポット三ヶ所をすべて回ると「願いがかなう」とか…!?
一ヵ所は大さん橋国際客船ターミナルからです。みなとみらい線日本大通り駅には横浜三塔物語のポスターが貼られています。
いかがですか、山下公園を散歩してこの山手地区まで少し足をのばしてみませんか?
(MASA)