あれから19年、お施主様より総点検して欲しい旨の電話がありましたので、
当時の現場監督と共に伺ってまいりました。
場所は茨城県常陸太田市。現地に近づくにつれ当時の記憶が蘇ってきます。
大屋根の家がご希望。しかしかっこいい大屋根にするには土地の長さが足
りないのです。設計者が考えに考えぬいてこの形になりました。
新しく購入された土地ですから地鎮祭をしたいとのこと。ここで少々考えてし
まいました。というのは、ご主人は仏教系の大学の先生、奥様はキリスト教系
の大学の先生だからです。仏教とキリスト教と神道。結局当地の神主さんに
来ていただいたという経緯がありました。
完成直後は緑がなかったこのお宅も、階段の手すりには太いツル草が巻き
付き、玄関脇には直径20cmにも育った山桜の木が、又背景の杉林の濃い緑
も風格の増した大屋根の家をよりいっそう引き立てていると感じました。
迎えてくださったお二人は、建築当時の営業と監督が来てくれたということで
心強く安心したようでした。早速各部屋と外部を観て回りましたが、とても19
年経っているとは思えない程傷みが少なくきれいにお住みになっているので、
二人して驚いた次第です。
外部の手の届く木部はこれまで何回かご自分でオイルステインを塗ってメン
テナンスをされていたとのこと。お引渡し時に外部の木部、ベランダや格子な
ど手の届くところは、業者に頼まなくてもご自分で塗れますからとお話はしてい
るのですが、なさる方は少ないようです。家に愛着が湧くと思うのですが…。
外部は屋根の塗り替え、内部は一部天井の布クロスの貼り替え、風呂場の
手スリ取り付けということだけで済みました。
当時は現在のように高気密・高断熱の建物ではありませんでした。お二人は
暖房は入れるが冷房はほとんど使用しないとのこと。エアコンにあまり頼らず
自然の風を取り入れ暮らすことが家の為にも当然住む人にも大事なんだと改
めて思いました!
住み始めた頃、近所の人が「太い材料で、ガッシリと造ってあってとてもステ
キな家ですネ」と言ってくれたんだ…と19年経った今、ご主人から伺いました。
嬉しかったですネ!
たくさんの蔵書があるこのお宅、ご主人はこうも言って下さいました。
「今度泊まるつもりで来て下さい、本をサカナに酒でも飲みましょう!!」
嬉しい!?
(三枝)