私は営業担当として多くのお客様の「家づくり」に関わって参りました。
その経験から、基本プランの完成度が住まいの良し悪しを大きく左右すると思っております。
どんなに良質の材料を用いて腕の良い職人達が造っても、基本設計プランが良くなければ良い家にはなりません。この事はごく当たり前の事と誰もが考えていると思います。
しかし注文住宅(自由設計)において、お客様との打合せを経てプランが変化して行く中で、その完成度を維持する事はとても難しい・・・・。
打合せを重ねる事でお客様はプランへの理解度を深められ、ご要望もより具体的になります。設計者にしてもお客様の言いなりではなく、全体のバランスを考えつつご要望に応えて行く。そしてより良いプランへとなるハズ・・・・。
ところが、なかなかそうは行かない事が多いのです。
つい先日も、あるお客様との打合せでこんな事がありました。何度かの変更を経て設計プランについてご了解をいただき、実施設計に移ろうとした矢先の事。
そのお客様から、申し訳なさそうに「初回のプランで進めたい」との電話を頂きました。
我々も改めて初回プランと決定プランを見比べました。確かに、どう考えても初回プランの方が完成度が高いのです。プランを決定したものの、一抹の不安を抱かれたお客様が、ファイルされていた全プランをもう一度見比べて考え直された様です。
また2年前に建物を完成されてお住まいの他のお客様は、こうおっしゃいました。
「基本的にとても満足しています。でももし今もう一度建てるなら、○○さん(設計担当)が最初に提案してくれたプランでやりたい。今にしてそのプランの本当の良さが解った気がします」
そんな事で、プランニングの難しさを痛感しています。
確かに設計者が初回プランを練る場合、建て主の要望はもとより、敷地や周辺環境、陽当たりや風通し、予算などを総合的に考慮してそのバランスを考えます。
ですから、建築主のご要望に大きな変化が無い限り、初回プランの完成度はかなり高いと言えるのかもしれません。建築主も私達も、プランを決定する前にもう一度初回プランを眺めてみてはいかがでしょうか。
(K.S)