現代の超機能的なシステムキッチンの形態は「食べ物を作る」という行為をコンパクトなものに制限してしまっています。このことは食材の種類や品質、食料の生産や供給体制にまで影響しています。
たとえばスーパーやコンビニでは、きれいにラッピングされ半分下ごしらえされたような食材ばかり。それ以上の行為を許さないほどに機能的でコンパクトな台所と、その台所にマッチしたコンパクトな食材の供給体制が現在の食行動を薄っぺらなものにと制限しているのです。
台所の形態が悪しきコンビニ文化を支えているのか。あるいはコンビニ・スーパー型の悪しき食材流通体制を前提としてシステムキッチンが設計されているのか。いずれにしても近代以降の台所の変貌が日本の食文化を壊し、季節感を壊しひいては和風を壊してゆくさまざまな要因を発生させているのは確かです。
季節を食す。自然をそのまま食す。新鮮なうちに食す。丸ごと食す。味わいを増すように保存する。ゴミを出さないような工夫された料理法の数々。こういったスローフードの流れはまさに和食の文化に沿ったものです。テレビCMに見られるようなにキッチンメーカーの生み出す台所は、相変わらずこういった食行動のトレンドとは正反対の方向へ進もうとしているように見えます。
(設計部 O)