はじめに
近頃、「和風の家」が見直されているといいます。この風潮は和風に良き時代を見いだし、現代にそれを取り戻そうとしているからなのでしょうか。しかし今どきの日本人にとって「昔風」と「和風」とではその意味するところに少しずれがあるような、私はそんな気がしています。
今、和風の家を求める人々は昔ながらの「和」とは少し違ったとらえ方をしているようです。今の人々は明らかにインターナショナルスタイルのいわゆる消費型デザインに飽きて、その矛先として自然派志向としての和、あるいは新しいデザイン様式としての和を連想しているようです。ですから求められている和風とは、モダンでかっこいいデザインの延長としての新しい様式であって、本質的な意味での和風とは異なるものなのです。昔の人が懐かしむ和風と現代の人々が憧れる和風。同じ和でも大きな違いがあるのです。
この、和の家に対するとらえ方の変化の原因と意味を考え、本来の「和の家」の姿を浮き彫りにすると、そこには多くの幻想が含まれていることに気づかされます。
この古い幻想と、新たに成立した和の家に対する意味を探り、その結果生まれる新しいスタイルとはどのようなものなのでしょうか?
私たちはそろそろ頭を切り換える時期に来ているようです。これからお話することで明らかにされるこれからの和風様式が、将来の日本の住宅のプロトタイプとなるのでは……。私は密かにそう思っています。
(つづく)
※「そろそろ日本の家」は、弊社設計部スタッフによるコラムです。